独り言

起きたとか、起きなかったとか、よくわからない

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玄関の扉を開けると、今にも雨の降りだしそうな曇天がビルの窓に反射して顔を覗かせていた。1人で息抜きをしに出かけるつもりだったので外出する必要は全くなかったのだけれど、シャワー浴びて服を着替えて身支度もしたということを考えると、どうもこのまま雨のせいで引き下がるのは納得がいかず、家の中を振り替えて見、傘立てにも入れられずに家の誰かが使ったまま壁に立てかけられたビニール傘を掴み、同時に逆の手で曇天が薙ぎ払われるように勢いよく扉を開け放した。すると現れたのは、この項垂れる空気をそのまま身に纏ったようなみすぼらしい見た目をした、1人の青年だった。

家の前の通りは、大通りから2本路地を入ったところなので昼の人通りはほとんどなく、またそのほとんども近所の主婦であったので、全く見知らぬ男がいることは珍しく、目が合ったまま話せないでいると、その男はそのタイミングを待ちかまえていたかのように声をかけてきた。

男は、黒目が小さいせいで見開かれているように見える三白眼で、しかも目の下に隈も多重にできており、擦り切れたハーフパンツ、ペチャンコになったショルダーバッグという、いかにも苦労しているといったような容貌をしてい、話し始めた内容もその容姿に全く見合うものであった。要するに、僅かでもいいからお金を融通して欲しいらしい。

見知らぬ人に物乞いをされるのは2回目の体験であったものの、初回はいかにも行き場のなさそうな女性の乞食であったので特に罪の意識もなく断ることができたが、今回はそこまで自分とは歳の離れていない男に物乞いされたのである。当然無碍に断るのはこちらとしても引け目を感ぜずにはいられない。